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高森明勅
2016.5.20 02:28

五輪招致不正疑惑と皇室

平成25年のブエノスアイレスでのIOC総会。

高円宮妃久子殿下が高雅なスピーチをされ、
会場にいた全ての人々に
深い感銘を与えた。

これが五輪の東京招致に決定的な役割を果たした、
というのが
衆目の一致するところ。

但し妃殿下ご自身は、賢明に招致活動とは一線を画しておられた。

皇室の政治利用との誤解を与えない為だ。

元々、この件について、宮内庁は強く難色を示していた。

その背景には、天皇陛下ご自身のご憂慮があった。

だが、五輪招致をアベノミクス最大の柱とまで喧伝していた
安倍政権は、
強硬に実現に漕ぎ着けた。

当時、宮内庁の風岡長官は「苦渋の決断」と述べた。

妃殿下の見事なご対応によって、政治利用そのものに陥るのは、
辛うじて回避出来た。

だが残念なことに、五輪招致を巡って忌まわしい買収疑惑が、
浮上した。

このことにより、妃殿下が結果的ながら招致に貢献された事実が、
ご本人のみならず、皇室の尊厳に傷を付けかねない恐れが出てきた。

今後、疑惑について、もし百パーセント潔白が証明されなければ、
皇室に対し極めて非礼なことになる。

そうした事態になれば一体、誰が責任を取るのか。

当時、宮内庁の懸念を一切、顧慮せず、
妃殿下のお出ましを執拗に求め続けたのは、安倍首相と菅官房長官
だったのだが。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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